J-PARCは"大強度陽子加速器"、「陽子」を加速して取り出しています。これを一次陽子と呼びます。加速された一次陽子はスイッチヤード(約200m)を通って、ハドロン実験室の金属標的に当て、K中間子などの二次粒子を作り実験に使用しています。
お馴染みのパイ中間子はアップクォークとダウンクォークからなりますが、K中間子はストレンジクォーク(Sか反S)を持つ特異な中間子になります。そのK中間子を選別するためには静電セパレータと呼ばれる装置をもちいます。どのように欲しい粒子を選ぶのか紹介します。
そして、毎秒およそ106 個超のK中間子ビームが生成され、電磁石群をもちいて分光器としてのスペクトロメータが形つくられています。そこではどのように未知の粒子の質量を知ることができるか、その秘密を体験します。
中性子科学系のビームラインにおける研究・開発の現場では、装置に付随する補助部品や治具など、個別の用途に応じた一点ものの部品が求められる場面が多くあります。このような用途においては、自由度の高い形状設計が可能であり、比較的低コストかつ迅速に部品を製作できる3Dプリンタが有効な手段として広く利用されています。
本講義では、3Dプリンタを用いたモノづくりの基礎から応用までを体験的に学びます。デジタルデータから実物を生成する一連のプロセスを通じて、設計と造形の関係性を理解するとともに、用途を想定した部品設計の考え方を扱います。
さらに、積層造形に特有の設計上の留意点について概説し、実用的な設計スキルの基礎を習得することを目的とします。
あわせて、試作から実装に至る一連の活用方法についても俯瞰的に理解します。
J-PARCのようなシンクロトロン加速器では粒子軌道を一定に保ちながら粒子を加速しますが、その粒子軌道は主電磁石と呼ばれる装置によって制御されています。その主電磁石をドライブするための電源が主電磁石電源です。
この体験では、主電磁石/電源の役割解説に加え、その電源動作の理解を目的としたACアダプタ回路の製作実習を通して、AC⇒DC変換の原理を学んでいただきます。
J-PARC MRシンクロトロン加速器は、陽子に毎回450kVの電圧を与え、加速器内を13万回回すことによりそのエネルギーを3GeVから30GeVに上げます。その電圧発生装置が高周波空胴です。
この高周波空胴にはJ-PARCが初めて加速器に導入したファインメットと呼ばれる金属磁性体コアが使用されています。ファインメットはその後世界各地でいろいろな加速器に使用されるようになりました。
今回の実習ではまず高周波制御装置などの見学と簡単な高周波加速及び空胴の原理を説明した後、実際にファインメットコア(直径約1m)の特性をネットワークアナライザーで測定します。実際に加速器運転に用いられている空胴に触れるとてもよい機会です。
J-PARCメインリング(MR)は、周長約1600mの周回型加速器であり、陽子ビームは約30万回まわりながら加速され光速の99.95%まで達し、ニュートリノ実験施設とハドロン実験施設に導かれます。
ニュートリノ実験施設へは「速い取り出し」ですが、ハドロン実験施設へは『遅い取り出し』と呼ばれるビーム取り出しが用いられます。これはハドロン実験施設において、時間当たりの反応検出回数を均一にするためのとても難しい技術です。ビームをハドロン実験施設へ安定的に取り出すためにさまざまな工夫がありますが、その一つが、ビームダクト内を真空に保つことです。真空が維持されなければ、せっかく生成したビーム粒子が気体分子との衝突により散乱して失われてしまいます。
本コースでは、周回ビームをゆっくりと取り出すための機器の紹介とともに、模擬ダクトの真空引きを体験していただき、一般の機械分野ではあまりなじみのない、ごく小さな圧力、真空ポンプの排気速度、リークレートなどの物理量について、解説、測定、また計算を通じて実感していただきます。