次世代光源として注目されているX線自由電子レーザー(XFEL)とエネルギー回収型直線加速器(ERL)の性能・特長と、それらを利用した研究の展望について。
電子線形加速器における全体の高周波の流れの概要を追った後、加速器コンポーネントにおける高周波デバイスの設計をする際に必要な基礎、シミュレーション、製作・試験についてそれぞれ1コマずつ解説を行う。
まず蓄積リング型の放射光源を例に、加速器全体としての構成要素や各要素に関するトピックに関して概略を述べる。その後、単粒子力学の基礎について解説を行う。
本講義では、電子ビーム中の空間電荷効果を中心として、ERL入射部中で重要となる物理現象を紹介する。解析的な手法を用いて電子ビーム中での空間電荷効果を概観した後、実際のビームダイナミクス計算で用いられている空間電荷効果の数値計算法を述べ、エミッタンス増大のメカニズムとその補償法を示す。また、ERL入射部では空間電荷効果だけでなく、加速空洞のRF場や合流部でのCSRがエミッタンス増大を引き起こす。これらの現象を計算例を示しながら紹介する。
ERLで期待されている数百フェムト秒オーダーの電子バンチでは、コヒーレントシンクロトロン放射光(CSR)に関わる新しい現象が起こると推測されている。本講義では、CSRに関する基礎的な説明から、ビームダイナミクスに及ぼす影響、そのシミュレーション結果について紹介する。そのほか、放射光源としての観測例にも触れていく。
超伝導空洞、回収原理と設計
ERLに必要な大電流高輝度電子銃について述べる。
100mA、規格化エミッタンス1mm-mrad以下の高輝度電子ビーム生成を目指す、光陰極DC電子銃の技術開発を主に紹介する。基礎となる陰極、エミッタンス、空間電荷効果等について解説する。
ERL用超伝導空洞のような超伝導機器を冷却するために必要な液体ヘリウムを生成するためのヘリウム冷凍・液化機の原理および構成について1つ目の講義で概略を紹介し、2つ目の講義では2K以下の温度での冷却を実現する超流動ヘリウムと2Kヘリウム冷凍システムに関する議論を行う。
光モニター
電子加速器で通常使われるビームモニターのうち、ビームからでる電磁波を使う(光、X線などのモニター以外の)モニターおよびその信号処理回路について、ERL試験加速器で想定されているものを例に概要と動作原理を概説する。
次世代放射光施設として推進中のERL計画においては、レーザー照射カソードDC電子銃の開発が進められており 、その正否がERLの性能を決定づける。電子銃で最も困難が予想されるのはレーザーの開発である。そこで本稿では電子銃開発に必要な レーザー光発生のための、 ERL電子ビームで駆動される自由電子レーザー(FEL)を考察する。可視光から紫外光領域にかけてのFEL発振は多くのFEL施設で実績があり、安定で信頼性の高いレーザー光の発生は日常的なものとなっている。FELでは可視光から波長200nm程度までのレーザー光発生は大きな困難を伴うことなく可能であり、短波長レーザー光を必要とする将来の金属カソード電子銃の開発にとって極めて有益であると考えられる。さらに将来像として、ERLの電子銃をERL自身で駆動するFEL光で動作させる、クローズドループ型ERLシステム(ブートストラップERL)を考えることができ、その可能性を追求する。本稿のタイトルはERLでドライブされるFELと、FELでドライブされるERLの二通りの意味を兼ねている。
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